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ε-N論法

自然数n(1,2,3,4,5…)について、nが大きくなるに連れて数列a_nはどんな値になるだろうか。

例えばa_n=1/nのとき
n=100 -> a_n=0.01
n=1000 -> a_n=0.001

と小さくなっていくことは分かるが、nが無限に大きくなった時に一つの値になることがある。
これを極限値といい、極限値があることを収束するといい、極限値が定まらないことを発散するという。しかし本当に収束するのかどうかをどうやって調べればいいのだろうか。

高校で習った \displaystyle \lim_{n \to \infty} \frac{1}{n}=0 は単に収束するという事実を表現しているに過ぎない。

ここで数列の収束について定義を用いよう。
[定義]ある正の実数εに対して全てのN番目の自然数がある。n>=Nのとき|an-a|<εを満たすならば、数列a_nは収束して極限値aをもつ。 これを記号で書くと  \exists \epsilon >0, \ \forall N \ s.t. \ n \geq N \rightarrow | a_n-a |
のようになる。

この定義を用いて数列の収束を議論することをε-N論法という。
定義そのものの説明は別の機会として、これを用いて具体的に証明することを試みる。

 \displaystyle \lim_{n \to \infty} \frac{1}{n}=0 については
 \exists \epsilon >0, \ \forall N の条件で
 n \geq N \rightarrow | \frac{1}{n}-0 |が導かれれば証明できる。

事前準備として
  1. \ |\frac{1}{n} - 0 | < \epsilon \\  2. \ \frac{1}{n}< \epsilon \\ 3. \ n> \frac{1}{\epsilon}
を計算しておこう

  1. \ \exists \epsilon >0 \hspace{10em} A \\  2. \ \forall N \> \hspace{11em} A \\  3. \ n \geq N \hspace{10em} H \\  4. \ n > \frac{1}{\epsilon} \hspace{10em} 1,2,3 \\  5. \ \frac{1}{n}< \epsilon \hspace{10em} 4 \\  6. \ |\frac{1}{n} - 0 | < \epsilon \hspace{8em} 5 \\  7. \ n \geq N \rightarrow |\frac{1}{n} - 0 | < \epsilon \hspace{3em} 3-6 \\

1と2の定義と3の仮定から4を得る。つまりεは正の実数であればどんな値でもよいので、自然数Nは変数εの関数に置き換えることができる。事前に計算をしておいた逆の手順で、4〜6までが導かれる。よって3の仮定ならば6であることが7によって示されている。従って、定義により数列1/nは収束し極限値0を持つことが証明された。 数列1/nの極限について、ε-N論法の言及はするものの、”n>Nとなるようなεは確かに存在する”というだけで説明を終えている書物が多い。そこで具体的な証明方法を説明してみた。
次の文献はε-δ論法についての証明だが、非常に分かりやすいので紹介しておく。
ε-δ論法による証明例