行列式の定義

線形代数において最も重要な指標である行列式は、有用で扱いやすいにも関わらず、行列式そのものがどのように定義されているかを理解するのは案外面倒である。

まずは高校で習った2*2あるいは3*3の行列式を求める公式をおさらいしておこう。たすき掛けの公式だ。

【2*2の行列式】
\begin{array}{|cc|}  a_{11} & a_{12}\\  a_{21} & a_{22}\\  \end{array} = a_{11}a_{22}-a_{12}a_{21}

【3*3の行列式】
\begin{array}{|ccc|}  a_{11} & a_{12} & a_{13} \\  a_{21} & a_{22} & a_{23} \\  a_{31} & a_{32} & a_{33} \\  \end{array}=a_{11}a_{22}a_{33}-a_{11}a_{23}a_{32}-a_{12}a_{21}a_{33}+a_{13}a_{21}a_{32}+a_{12}a_{23}a_{31}-a_{13}a_{22}a_{31}

3*3までは公式があるので覚えるだけで良いが、それ以上となると定義を理解していないと計算ができない。

m*nの行列Aについて
  A = \left(  \begin{matrix}  a_{11} & a_{12} & \ldots & a_{1n} \\  a_{21} & a_{22} & \ldots & a_{2n} \\  \vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\  a_{m1} & a_{m2} & \ldots & a_{mn}  \end{matrix}  \right)

行列Aの行列式をdet(A)と表し、以下のように定義されている。
  det(A)=\sum_{\sigma}sgn(\sigma)a_{1\sigma(1)}a_{2\sigma(2)}a_{3\sigma(3)}\ldots a_{n\sigma(n)}

この定義から行列式特有の性質が導かれ、それらを利用する事でどんな行列式も計算が可能となるのである。しかしこの定義は一見何だかわからない。いきなり理解はできないので、まず数字の並び順について考えてみよう。並び順とは、例えば(1234)という数字の並びがあって、入れ替えることによって得られる並び方、例えば(1243)や(3124)などである。並び替えるには2個の数字を入れ替えるという作業を繰り返すこととなる。

(1234)から(3412)へと並び替えるには、1と3を入れ替えてから2と4を入れ替えるとよい。
  (13):(1234)\to(3214)\\  (24):(3214)\to(3412)\\
2個の数字を入れ替える作業を互換という。互換を繰り返してある並び順にすることを置換といい、例えば(1234)の置換はσで表すと4!=24個ある。

  \sigma_1=\left(\begin{array}{cccc}1 & 2 & 3 & 4 \\1 & 2 & 3 & 4\end{array}\right),  \sigma_2=\left(\begin{array}{cccc}1 & 2 & 4 & 3 \\1 & 2 & 4 & 3\end{array}\right),  \sigma_3=\left(\begin{array}{cccc}1 & 3 & 2 & 4 \\1 & 3 & 2 & 4\end{array}\right),  \ldots,  \sigma_{10}=\left(\begin{array}{cccc}1 & 3 & 2 & 4 \\2 & 3 & 4 & 1\end{array}\right),  \ldots,  \sigma_{24}=\left(\begin{array}{cccc}1 & 3 & 2 & 4 \\4 &3 & 2 & 1\end{array}\right)
となり、これをより一般的に表すと、
  \sigma=\left(  \begin{array}{cccc}  1 & 2 & 3 & 4 \\  \sigma(1) & \sigma(2) & \sigma(3) & \sigma(4)\\  \end{array}  \right)
となる。

置換の方法は一意ではないが、何回互換を行うかの数は常に決まっている。互換が偶数回で得られる置換を偶置換、奇数回で得られる置換を奇置換という。

互換回数が偶数か奇数かによっては符号のみ変化するのだが、それのことは次の差積によって説明しよう。
  F(x_{1},x_{2},x_{3},\ldots,x_{n})=(x_{1}-x_{2})(x_{1}-x_{3})(x_{1}-x_{4})\ldots(x_{1}-x_{n})\\  \times (x_{2}-x_{3})(x_{2}-x_{4})\ldots(x_{2}-x_{n})\\  \times (x_{3}-x_{4})\ldots(x_{3}-x_{n})

ここで任意の変数xpとxqには3つの入れ替え方がある。
  (x_{q}-x_{p})\\  (x_{q}-x_{i})(x_{p}-x_{i})\ i=1,2,\dots,q-1\ or\ i=p+1,\dots,n\\  (x_{q}-x_{i})(x_{i}-x_{p})\ i=q+1,q+2,\dots,p-1
1番目は符号が入れ替わるが、2番目はiがqより小さくpより大きく3番目はiがqより大きくpより小さいため符号が変わらない。このように、どのような互換を経てもFはFか-Fとなる。一回の互換で符号が変わるので、最終的に互換の回数が奇数の場合はマイナス、偶数の場合はプラスと定まる。

ここで偶置換か奇置換によって得られる符号関数を、sgn(σ)=1(偶置換のとき),-1(奇置換のとき)と表す。

さて、もう一度行列式の定義を見てみよう。今度はsgn(σ)やa1σ(1)が何であるかが分かるだろう。

  det(A)=\sum_{\sigma}sgn(\sigma)a_{1\sigma(1)}a_{2\sigma(2)}a_{3\sigma(3)}\ldots a_{n\sigma(n)}


あえて言葉で説明するなら、m*nの行列Aについてそれぞれの行番号に対応する置換された列番号の要素の積に、偶置換か奇置換かによって変化する符号関数を掛けたものを総和する、というものが行列式ということになる(日本語あってるのか?)

実は、定義を理解するのが難しいのではなく、表現するのが難しいということに今気がついた。